好きです好きです好きです。心の中で連呼する。もちろん答えは返ってこない。そして相手にも伝わりはしない。それは残念だ。わたしは恭弥を目の前にして、なにも言えず黙りこくっている。恭弥、と呼ぶのだって心の中だけで、本当は苗字で呼ぶのも精一杯。 「ひひ雲雀さん……!」 「どうしたの」 「…………」 「…………」 さっきからこれの繰り返し。時々広告か友達からメールが届き、それを見る。そしてそれを恭弥が覗き込む。誰からだとか、何の用だとか聞くわけでもなく、また元に戻る。今、わたし達が座っているのはわたしの部屋のベッドな訳だが、アレやソレと言ったことはまったくなく、隣同士に座っているだけだ。 「ねえ、」 「な、にかな雲雀さん」 「…………」 「…………」 あれれ、何故か恭弥まで黙り込んでしまう始末。まさかわたしの真似事?まさか。ああ、私服の恭弥は死ぬほど格好良い!と最初見た時にも思ったけれど、まさかそんなこと口にできるはずもない。そうやって悶々としていると、こちらを見つめる恭弥の視線に気付く。けれどそれはわたしのことを通り抜けて、バルコニーの方へ行っていた。 「花」 そう恭弥が言った。わたしは恭弥の方を見るのをやめて、バルコニーへと目を移す。そこには、ピンクとパープルのリナリアがあった。その花はたしか、この間フラワーショップで一目惚れして買って来たものだ。可愛くて可愛くて、今朝もたっぷり水をあげた。 「あ、あれ。リナリアだよ。可愛い花でしょ?この間つい買っちゃったの」 「ふーん」 そう言って少し哀しくなる。ちょっとだけ期待してみたのが悪かった。アレだ。「花よりも君の方が可愛いよ」みたいな。まあ、今時そんなことを言ってくれる人がどこにいるだろう。少なくとも、恭弥はそんなこと言わない。 「じゃ、あれ」 恭弥が指を差したので、もう一度バルコニーの方を向く。すると後ろへぐんと引っ張られて、わたしは咄嗟に目を瞑った。 とん、と衝撃を覚えた。背中じゅうに温かな体温を感じて、目を開けるとお腹の辺りには恭弥のであろう(他に誰だって言うの!)腕。それを認識した途端頭が真っ白になって、わたしは「あわわわわわ」とか変な声をあげてしまった(だって、つまり、これは、)。 「何、変な声あげてるの」 「え、あの、だって……!」 「面白いね、」 つまりこれは、わたしが雲雀さんに抱きしめられてるって事で。わたしを抱きしめる恭弥の腕がとても熱く感じて、わたしの心臓は今にも破裂しそうなほどに脈打っていた。きっと、顔も真っ赤だ。どうしよう、恭弥の方向けない。 「ひば、りさん」 「だめ」 名前を呼んだところすぐさま却下され、わたしは戸惑ってしまった。依然心臓はばくばくしてるし、恭弥の匂いはするし(変態みたいだ)、わたしは幸せなのやら、どぎまぎするやらでもう大変だ。そう思っている間にも、恭弥はわたしの首筋に顔を埋めてくる。くすぐったいし、恥ずかしい! 「え、えっと……ひば」 「恭弥。きょ・う・や」 「き、恭弥……?」 「そう。よくできました」 つまり恭弥は名前で自分のことを呼んで欲しかったらしいのだけれど、わたしは名前を呼んでしまって(心の中ではなくて!)舞い上がってしまい、既に赤くなっている顔に更に血が集まっていった。 「、可愛いね。耳まで真っ赤だよ」 「え、あの…えっと…!」 「リナリアの花言葉、知ってる?」 リナリアの花言葉?急に聞かれたので真面目になって考えた。けれど花言葉にあまり関心がなかったため、思い当たらなかった。だって、薔薇の花言葉すら知らないのだ。 「うん、と……知らない」 「君のことだよ」 「わたしのこと?」 「」なんていう花言葉があるのだろうか、と馬鹿正直に考え込んでしまった。そんなわけがないと思って恭弥の方を見ると、ばっちり目が合ってしまった。その視線に貫かれて、心臓が飛び上がった(ような気がした)。 「僕を惑わせる」 恭弥はそう言うと、そちらを向いたままだったわたしの顎を引き寄せてキスをした。わたしは為すがままにされるしかなくて、目を瞑った。啄むように何度かキスをして離した。わたしは混乱して「ありがとうございます!」と大声で言ってしまって、恭弥に笑われた。その後「愛してる」と言われて、どうしようもなく幸せな気持ちになった。わたしも小さな声で「わたしも……」と言うと、恭弥はもう一度わたしにキスをした。 ぺろりと舌を出して口唇を舐める恭弥を見て、くらりとした。 恋とリナリア *** 主催者の紅です。 しばらく二次創作の世界から離れていたので、夢小説書くのが難しい! しかもシリアスの方が書くの得意だったために苦労しました(汗) 甘くなってたら幸いです。 参加者の皆様、このような企画に付き合っていただいて、ありがとうございます! 小説を読んで下さったみなさま、楽しんでいただけたでしょうか? お越し下さって、本当にありがとうございます! |